いつも通りの散歩道


森の中を歩いていると、
底に無数の落ち葉が堆積した池があった。
その水脈は荒れ果てたマンションの地下に繋がって、
マンションの向こう側には山を突き刺す線路がある。
池にさっき誰かが居て、こっちを見ていた。
きっと、それは河童に違いないと理由もなく思う。
河童を追いかけるべきか?
走って森を抜ける。
落ち葉の積み重なる道を駆けていくと、
山を貫通した線路に出て、
目の前を踏切の音と列車が通過する。
踏切を越えれば、
地下に下水の流れる道に出る。
もっと先へ行けば階段がある。
石造りの階段は幾つも幾つも組み合わさって、
丘の斜面の至る所に空中庭園が造園されている。
腐って文字が読めなくなっている卒塔婆が立ち並ぶ、
管理のまるで行き届いていないお墓は何処だ、と
墓地を探して階段を登り降りすればいずれ、
地蔵の群れとコンクリートを割って生える百合が見つかる。
あるいは水路を引いて木道を張り巡らせた薬草園に辿り着くのかもしれない。
丘を越えて、長い下り坂を下りていけば、
目の前に現れる人工の池にあまり流行りそうにない巨大テーマパーク。
一番の目玉は何かの歴史を紹介する長い洞窟のようなアトラクション。
それは丁度池の下を通っているので、
いつでも池の畔に出ることも、そこから入場することも出来る。
池の中央に浮かぶ島に行かない方が良いと聞く。
あそこの地面の傾斜角はあまりに大きくて、
大勢の人が池に落ちて死んだそうだ。
時間外れの誰も居ないテーマパークのすぐそばには、
色鮮やかな店舗が積み重なるショッピングモールがある。
いつ来ても、そこに欲しいものは見つからない。
ただけばけばしくて怪しげな雰囲気目当てに客はやって来るのか?
ショッピングモールの反対側には、
そびえ立つ壁のように見えるマンションがある。
もう随分と老朽化してしまったようだ。
マンションの奥へと伸びる通路は何処かに繋がっている。
けれども、その繋がりは実に偶然と偶発、
気まぐれかつ意図せざる接合によって成り立っており、
こちらの望む場所に辿りつけた試しがない。
その通路にたむろする物好きな連中もいたものだが、
すれ違った次の瞬間にはもう、
その顔は薄暗い通路の暗がりに溶けて思い出せない。
声をかけようにも、生憎連中は無口だった。
「立入禁止」のテープをくぐって通路を歩く。
崩れかけの壁に天井、
靴音の反響音を響かせながら歩いていれば人一人分の壁の裂け目。
それはプラットホームへの入り口だった。
とても小さな駅のホームだった。
ここはトンネルの中か、地下鉄か?
ホームを照らしているのはたった二つの小さなカンテラ。
細い糸で天井に吊るされているのか、それとも宙に浮いているのか、
暗くてよく分からない。
そこへ来る電車は小さなワンマンカー。
銀色メタリックなボディーにくすんだ青色ラインの模様。
中は誰も居ない。
運転席にも誰も居ない。
車窓の景色は相変わらず真っ暗で、
炭鉱トロッコを思い出す。
電車が止まって出てみれば、
目の前に均等な間隔を置いて並んだ街灯に照らされた一本の道。
街灯の光は白く、その光に浮かび上がる道もコンクリートのように平坦で白い。
その周りはとても深い闇ばかり。
道に沿って歩いていくと、歩行者専用と思われるトンネルがあった。
トンネルはそう長くはなかった。
そこを抜けると、途端に空間が広がった。
まるで途方もなく巨大なドームのような空間だ。
下から、絶えず風が唸る声が聞こえてくる。
今、恐ろしく高いところに居るらしい。
見下ろすと、そこには道がある。
見上げても、そこには道がある。
大きく広がる暗闇の空間の中に、
白く照らされたいくつもの道が縦横無尽に走ってはぶつかり、交差し、分かれる。
道は、再び無数のトンネルへと続く。
自分の靴音が良く響いた。
そしてまた、聞こえる電車の音。
また線路が、何処までも伸びている。
その線路は山を貫通して、
池の水脈は遮断されて無数の落ち葉が堆積し続ける。
河童は目の前の踏切で列車が通過し突き刺され、
地蔵の群れとコンクリートは腐ってしまった。
卒塔婆が立ち並ぶ、お墓は何処だ。
丘の斜面の至る所に階段を幾つも組み合わせ、
巨大テーマパークを造るのだ。
河童の目玉は丁度池の下で腐って、こっちを見ていた。
大勢の人が人工の歴史を紹介する。
あるいは池に落ちて死んだ河童のために、
テーマパークに墓地のある巡らせた石造りの薬草園を造園した。
もっと先へ行けば、けばけばしくて怪しげなショッピングモールがある。
その傾斜角はあまりに大きくて、中は誰も居ない。
いつ来ても、管理のまるで行き届いていない。
もう随分と老朽化して、壁の文字が読めなくなっている
こちらの望む店舗に辿りつけた試しがない。
死んだ客はやって来るのか?
そびえ立つ卒塔婆に見える色鮮やかなマンション。
気まぐれかつ意図せざる積み重ねによって成り立っており、
奥へと伸びる通路は何処かの無数のトンネルに繋がっている。
そこへ来る大勢の連中は生憎無口だった。
声をかけようにも、すれ違った次の瞬間にはもう、死んだ。
時間外れのアトラクションの反対側には、「立入禁止」のテープ。
いつ来ても、百合は見つからない。
銀色メタリックな百合に、くすんだ青色ラインの百合。
あまり流行りそうにない靴。
その繋がりは思い出せない。
崩れかけの小さなワンマンカー。
生憎それは細い糸で天井に吊るされて、運転席にも誰も居ない。
炭鉱トロッコの周りはとても深い闇ばかり。
車窓の景色は相変わらずコンクリートのように平坦で白い。
一人分の壁の裂け目に沿って歩いていくと、
恐ろしく高い、途方もなく巨大な反響音が、
均等な間隔を置いて絶えず唸る。
光に浮かび上がる二つの小さなカンテラ、
宙に浮いている巨大なドームを白く照らす。
暗闇の空間の中に、電車が縦横無尽に走ってはぶつかり、
見下ろすと恐ろしく、見上げても風が恐ろしい。
歩行者専用の線路が交差し、分かれ、
再び無数の靴音が良く響いた。
深い闇が、何処までも伸びている。
山を貫通して、無数の落ち葉が腐ってしまった。
大勢の人が地蔵の群れと卒塔婆が立ち並ぶ巨大テーマパークを造る。
死んだ河童は丁度池の下で人工の歴史を幾つも組み合わせ、
池に落ちてもう随分と腐ってしまった。
もっと丘の斜面の先へ行けば、
老朽化して色鮮やかなコンクリートのトンネルに「立入禁止」のテープ。
階段をけばけばしく幾つも組み合わせ、
大勢の人が次の瞬間にはもう、死んだ。
まるで石造りの薬草園の管理の行き届いていない傾斜角は、
時間外れの流行りそうにないアトラクション。
声をかけようにも、こちらの望む壁の文字は生憎無口だった。
いつ来ても、天井に吊るされて、すれ違った。
無数の死んだ客は意図せざる積み重ねに沿って歩いて、
巨大なドームに走ってはぶつかり、
縦横無尽に恐ろしい闇が唸る。
平坦で白い小さなワンマンカー。
銀色青色ラインのくすんだ裂け目が思い出せない。
いつ来ても、光に浮かび上がる一人分の百合は見つからない。
炭鉱トロッコの車窓は途方もなく細い糸で吊るされて、
反対側には、恐ろしく均等な空間の中に、
小さなカンテラが、何処までも伸びている。
大勢の死んだ河童は無数の落ち葉が山を貫通して、
人工の歴史が腐ってしまった「立入禁止」のテープを造る。
もっと池に落ちて斜面の先へけばけばしく老朽化し、
トンネルを幾つも組み合わせ、次の瞬間には生憎死んだ。
石造りのいつ来ても管理の行き届いていない傾斜角は、
声をかけようにもドームに天井に吊るされて、
巨大な闇がコンクリートの卒塔婆を積み重ね、
こちらの望む小さなワンマンカーは時間外れ。
意図せざる文字は唸る。
縦横無尽に薬草園走ってはぶつかり、
途方もなく細い糸が、何処までも伸びている。
腐ってしまった歴史を幾つも河童は組み合わせ、
管理の死んだ傾斜角は声をかけようにも外れ。
こちらの望む文字は縦横無尽に老朽化。
石造りの巨大な闇が次の瞬間、
池に落ちて吊るされて、無数の卒塔婆が山を貫通。
生憎コンクリートのワンマンカーが落ち葉をドームに積み重ね、
「立入禁止」が、何処までも伸びている。
池に幾つも河童は石造りの山を積み重ね、
次の瞬間文字はこちらのドームに吊るされて、
死んだ傾斜角は生憎老朽化。
腐ってしまった歴史が、何処までも伸びている。

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